患者さんの気持ち

調剤薬局での出来事

毎日多くの方が訪れる医療機関では、一人として同じ容体、性格、感性、状況というものはなく、実に様々なやり取りが行われています。これは患者側だけでなく、医療従事者側にも当然いろんな性格の人がいて、お互いいろいろなことを感じ合いながら医療が行われているわけです。スタッフにとっては慣れた医療現場ですが、不安な気持ちで訪れた患者さんはどんなことを感じているのでしょうか。
一つの事例で考えてみたいと思います。

忘れられたプライバシー

先日こんな話を聞きました。
ある調剤薬局の受付で、薬剤師さんが患者さんに「カンジタなんですね。かゆみが強いんですね。どこが? いつから?」と待合室の人にも聞こえるような声で矢継ぎ早に質問するのだそうです。
「カンジダ」というのは、ストレスなどによって皮膚や粘膜に常在するカンジダ菌が異常に増殖する病気で、性器のかゆみやおりものがみられ、薬を使って1週間程度で治療することができるそうですが、人には知られたくないものですよね。
誰でも恥ずかしい、人には知られたくないということがあります。なぜこんな当たり前のことをこの薬剤師さんは忘れてしまったのでしょうか。
薬剤師さんにとってはこの事例も仕事上特別なことではなく、日常的な患者応対であることが想像できます。例えば、
*病気や薬のことは考えているが人の感情までは考えない
*仕事は迅速・的確・性格が第一優先、余計な会話をする時間はない
*事務的なやり方でも薬剤をきちんと渡すことができれば、余分なコミュニケーションは無駄
などといった心理が想像できますが、患者の立場で考えれば、毎日付き合う付き合う大切な薬、気持ちよく受取って帰りたいものです。またこの事例では病状のことを詳しく聞いていますが、こんな聞き方をされたら、患者としては「病気のことは医師に話して薬が出ているのになぜまた詳しく聞かれるのか」と言いたくなるでしょう。薬剤師さんの仕事としては理解できても、「大事なプライバシーを人に聞こえるように聞くなんてあり得ない!と感じるのではないでしょうか。
薬局に限らず、患者さんと医療者との間には「感じ方の距離」があると言われますが、医療者にとっては普通のことでも、患者さんにとっては非日常の状況です。この受付越しのやり取りは、治療の横に常に介在している患者さんのプライバシーや羞恥心への配慮が不足していると言わざるを得ません。
医療のプロであれば知識や技術にプラスして、患者さんへの配慮というものを身につけておいてほしいものです。

より敏感になったプライバシーへの意識

パンデミック以降、プライバシーに対する意識は大きく変わりました。また生活スタイルの変化やSNSの広まりなどで個人情報提供に慎重な人が増え、コロナ禍で個人情報の利活用が進んだ一方、個人の権利やプライバシー保護の重要性も再認識されています。こんな時代だからこそ、プライバシーへの配慮、気持ちへの配慮が重要視されているのではないでしょうか。
接遇は「相手の立場に立った思いやりの行動」です。時々自分の応対の在り方を振り返って、自分の言動で患者さんがどんな気持ちになっているのか、何を大切に患者さんと向き合っていくことが必要か考えることも大事ですね。