無理を言われる患者さんにどう向き合うか

「急いでるから先に診察して」などと言う人はそんなにはいないと思いますが、このような無理を言われる方は“0”ではありません。理不尽なご希望でなければできるだけその方の意に添いたいところですが、「これはちょっとご希望に添えそうにない」、こんな時本当に困ってしまいます。
できる限り不満をため込まず、気持ちよく診療してもらうために、どんな風に受けとめ実際にどんな態度で接していくことが必要か、考えてみたいと思います。

無理を言われる患者さんの気持ちにどう寄り添うか   

まずは、なぜ「急いでるから先に診察して」とその方が言われるのか想像することが必要です。ひょっとしたら自分でも「わがままなことを言っている」と感じておられるかもしれません。しかし言わずにいられない事情があるのかも・・。医療者の接遇はこの「相手の立場に立つ想像力」から始まると思ってください。きっと何か理由がある、そう受けとめてポジティブに向き合うこと、そして人間はわがままな生き物とある意味覚悟しておくことが第一関門です。接遇とは、相手の立場で考える思いやりの行動なのです。

気持ちをどう形にするか

こんな時役に立つのが言葉や態度の表現方法です。心情にあった表情と寄り添おうとする前のめりの姿勢、受容・共感といった言葉を添えるだけで相手への印象が大きく変わります。

会話例  「忙しいからすぐ診察して」と言われた時
「お忙しいんですね。大変ですね。お仕事ですか」(受容・相手に関心を示す)
「そうですか。お約束がおありなんですね。お約束となると時間が気になりますね(共感)
「では状況を確認して参りますので少々お待ちいただけますか」
(あいづち・うなずき・アイコンタクト・微笑み・受容・誠意ある行動)

病院という公共の中で自分勝手な要望にお応えすることはできませんが、ちょっとだけ相手の立場に立ってみましょう。患者さんは自分を否定されなかったこと、少しでも受け入れてくれたことで随分気持ちが落ち着くはずです。
ここで「順番ですからできません」などと強く出ると、もめ事に発展してしまうことが多いのです。

会話例   「お待たせしました(謝意・会釈) ○○さんのご診察ですが、今から3番目にお呼びできるようです。申し訳ございませんが(クッション言葉)、あと20分ほどお待ちいただく状況ですがご都合はいかがでしょうか(具体的な説明・お願いする気持ち・真剣な表情)。できるだけ早くお呼びできるよう進めておりますのでよろしくお願いいたします(誠意)」

私が案内係をしていたとき心底感じたのは、患者さんと同じ土台に立って同じように悩み考えたとき、患者さんはとても嬉しそうにされ不満を解消して下さるということでした。
思いっきり共感して、「予定があるんでしたらお急ぎですよね。どうしましょうか。できるだけ急ぎますがあと20分くらいかかると思うんです。20分だと困られますよね・・本当にどうしましょう・・」と患者さんと一緒になって悩むのです。一緒に悩む、考える、気持ちを分かち合うというとオーバーですが、そういった対応で患者さんの気持ちが和まれることは多いものです。

言葉と動作は車の両輪

気持ちをこめた言葉に丁寧な動作で感じの良い対応を・・

この時 “言葉”と“動作”のバランスをとり、心を込めて誠意を感じていただけるようにしなければなりません。言葉だけとか、体裁を繕うような態度は必ず見透かされます。
どんな時も、心情の理解を抜きにしてよい人間関係を作ることはできません。無理を言われて困ったな・・と感じることもあるでしょうが、ほんのちょっぴり相手の立場になって、受容と共感を実践してみて下さい。
「相手の立場に立つ」という接遇の基本概念を、自分の言葉と動作を通して形にできるよう工夫して下さい。

筆者

医療専門接遇講師 ケイズオフィス 佐竹桂子

眼科病院と総合病院で外来での案内係や秘書として勤務後、医療機関を専門に研修活動を行うケイズオフィスを立上げ、これまで西日本から九州一円の病院・クリニック・介護施設・調剤薬局、医療関連企業などで研修を行って参りました。 医療従事者の接遇は「患者さんの自然治癒力を引き上げるためにある」ことを基本に、医療スタッフの持つホスピタリティマインドを引出し、患者さんの良きパートナーとなるために医療接遇向上に全力で取り組んでいます。